踏切の緊急ボタンを押したときの話

踏切の緊急ボタンを押したときの話

humikiri

踏切の緊急ボタンって赤くて丸くて、いかにも押してくれ~って風貌ですが、普段は決して触れてはいけないものです。押してはいけないからこそ、ちょっと押してみてぇなぁなんて心が芽生えてしまうのですが、常識ある社会人としてそんな道を踏み外す事はできませんね。

同じように学校にあった非常ベルのボタンも普段から押してみたいなぁなんて衝動に駆られましたが、まぁ押さずにガマンできた自分を褒めてあげたい。。。

そういえば、うちの兄貴が小学校2年生の時に掃除の時間に雑巾がけしてたら誤って押してしまったことがあるそうな。
もちろん非常ベルが校内に鳴り響いていっときしたら上階にクラスがある5年生が整列して階段を下りて来たらしいです。うむ、しっかり訓練が活かされているようだ。

さて昔話はこれくらいにして、ある日会社の近くの踏切を歩いて渡っていた時の出来事。

友人と踏切を渡っていたのですが、前には若い夫婦がいて、お父さんが子どもを抱っこしてお母さんがベビーカーを押していました。

踏切内で押すベビーカーは線路をまたごうとするたびに車輪が引っ掛かり、若いお母さんはとてもイライラしている様子です。

場所は鹿児島の玄関口とも言える鹿児島中央駅のすぐ近くの踏切で、設置されている線路は4本。ベビーカーからしたら障害物が4つも存在することになります。折りたためる状況であればたたんだ方が楽かもしれませんね。

しかしながらお母さんは一生懸命ベビーカーを押してまして、なんとか無事踏切を渡り終えようとしていました。

その時ちょうど踏切が鳴り出したのです。若いお母さんはベビーカーを踏切外に押し出したのですが、後ろを振り返って「大丈夫かなあれ?」と旦那さんに話しかけてました。

振りかえると踏切の真ん中付近でキャリーカーを押したおばあさんが、どうやら車輪が線路に引っ掛かって身動きがとれなくなったらしく右往左往していました。おばあさんは焦っているものの、すぐには対処しきれないようでガチャガチャ必死に車輪を外そうとしています。

そうこうしているうちに踏切の遮断機が完全に下りてしまい、周りの人たちがザワつきます。

そんなときに前を歩いていた若いお母さんはざっと踏切内に入っておばあさんの救助に向かいました。もう一人くらい別に救助に線路内に入って行った人がいたと思いますが男手が不足しているようでした。

私もいかなければ、と思ったのですが足元をみるとサンダルを履いている私は一瞬躊躇しました。会社にいた私はリラックスするためにサンダルに履き替えていました。救助にいくにしてもサンダルでは心もとないと思いました。しかしこの状況を傍観することはできません。

まずは安全確保だ!と思い周りを見渡します。

電車が通るにしても中央駅はすぐ近くです。もし駅側から電車が来るようであれば見通しは良いし、駅から発車したばかりの電車はたいしたスピードもないので、異常に気付けばすぐに停車してくれる可能性があるのでリスクは低いのですが、問題は反対側。

駅と反対側はカーブになっており少し見通しが悪かったので、スピードの出ている電車が異常に気づいて踏切前で停車してくれる確証がなく、危険であると思いました。

しかし、周りを見渡した時に緊急ボタンがあるのに気付きました。大きな赤いボタンがそこに鎮座しています。平常時は決して押してはならないボタンです。ボタンの下には注意書きがあります。「このボタンをいたずらで押してはいけません。法律で罰せられます」と。

humikiri

しかし、今押さずにいつ押すのか!今こそ緊急ボタンを活用する時だ!たぶん、周りを確認してからこのボタンを押そうと決断するまで1秒くらいの時間だったと思います。人の命が掛ってるのです。とにかく安全を確保するために緊急ボタンを押しました。

すると「ピピピピピ・・・」音が鳴り始めました。よし、しっかりと動作してるっぽいぞ。そう思いながら再度電車が迫っていないか左右を確認し線路内に立ち入ろうとしました。

そのとき踏切内にアナウンスが入りました。

「はい、ゆっくりでいいですよ。大丈夫です。」

おそらく中央駅で異常を確認してモニタリングしてたのでしょう。

そういえば若いお母さんが線路内に入ったときにピーッと鳴ったような。良く見ると踏切内にセンサーらしきものがいくつも設置されています。

そっか、これだけの規模の踏み切りだし駅も近いのですぐに危険を察知できるよう万全の態勢になっているのだ。

緊張して観ていた人たちの間にいっきに安堵の空気が生まれました。

ゆっくりおばあさんとキャリーカーを外に出せるのであれば私まで行く必要がないと思ったので、その場を去ろうとしました。しかし、こんなアナウンスが流れました。

「え~緊急ボタンを押したのは誰ですかねぇ?」

はい?今なんて?

緊急ボタン押したの私ですが・・・。

まぁ押した事に後ろめたい気持ちなんてこれっぽっちもなかったので名乗り出ても全然構わないのですが、どこに名乗り出るのだ?という問題。

どこにカメラがあるのかも分からないし、ギャラリーが集まってる中で「はいはい私で~す!」ってアピールするの?

感謝されるのか注意されるのか検討もつかないけど、注目を浴びてまで自己申告する意義を感じられなかったので申し訳ないけれども、そっとその場を後にしました。(もし鉄道関係者の方でこれが何を意味するのか分かる方、教えてほしい。。。)

踏切の緊急ボタンの話は、先日あった半蔵門線のベビーカー事故のニュースを見ていて思い出しました。

私としては、緊急ボタンを押せば否応なしに付近の電車が緊急停車してくれるものだとばかり思ってました。しかし、半蔵門線の事故は電車の中と駅構内の二か所で押されたにも関わらず電車は通常通り運行してしまった。車掌と運転手が把握していたにも関わらず。

結局のところ緊急ボタンは通知するだけで、最後に電車を止めるのは人の判断になってしまうことです。鉄道の全部がそういう仕組みかは分かりませんが、緊急ボタンを押しても電車が緊急停車する保証はないということが分かりました。

緊急ボタンを押したからといっても、安心して線路に救助に立ち入るわけにはいかないということ。緊急通知を受けた人間の判断によっては電車は停車・減速せずにつっこんでくる可能性も否めないということですねぇ。

しかし、半蔵門線の事故はけが人がいなかったことは不幸中の幸いです。今回の事故をもとに安全のあり方に対してさらなる努力がなされることを願うばかりです。